(事例)
A弁護士は実名と経営する法律事務所名を明記したうえでインスタグラムを利用していました。
ある日,A弁護士はインスタグラム上で「最初にすがってくる依頼者ほど,弁護士費用を支払う段階になってこじれる」というメッセージを一般公開しました。
A弁護士に民事事件を依頼したことがあるBさんは,このメッセージを目にして,「自分のことを言っているのではないか」と思い,A弁護士に対する懲戒請求を行いました。
(解説)
インスタグラムやツイッターなど,現在は多種多様なSNSが利用できます。
SNSの利用人口はスマートフォンの普及に伴い拡大していますが,弁護士もSNSを利用することがあります。実際に,最近では実名や弁護士事務所名を明記してSNSを利用している弁護士も少なくありません。
SNS上での弁護士の発言は,営業上の意味合いのほか,社会問題に対して意見を提起する場合もあります。
法律の専門家として弁護士が社会に対しメッセージを発することには,相応の意味があると思われます。もっとも,市民の間でもSNS上での発言が誹謗中傷のように問題になるのと同様に,弁護士の発言が問題になることもあります。
そして,弁護士の場合は民事上や刑事上の責任のみならず,懲戒請求がされるという弁護士特有の問題が生じます。
SNS上での発言は,面と向かってのものではないため,意味合いの解釈等をめぐり,誤解を招きやすいという性質があります。
また,事件処理に伴う口頭や書面上での発言と異なり,SNS上の発言は直接には法律業務と関わらないことがほとんどなので,ついあれこれを言い過ぎてしまいやすいとう問題もあります。
実際に,SNS上で弁護士がいわゆるネットスラングを用いて行った投稿に対し,懲戒請求がされるというケースもありました。
先ほども述べたとおり,SNSはうまく利用すれば,弁護士による発言だからこその社会的意義もあると思いますが,懲戒請求がされる事態になったのであれば,速やかに懲戒救済弁護士に相談を行った方が賢明です。
当該発言が懲戒事由に該当するか,懲戒手続の経験・実績が豊富な懲戒救済弁護士からアドバイスを受け,懲戒手続の進行に応じた適切な措置を行っていく必要があります。