このページの目次
1 品位を失うべき非行
懲戒事由の4つ目は、品位を失うべき非行(弁護士法第56条)です。
ここには、職務上の義務違反だけでなく、私生活上の行為でも懲戒事由となります。
また、法律・会則違反と異なり、具体的な規範がなく、過去の例に照らして、弁護士の品位を失うべき非行に当たるかどうかを判断されることとなります。
2 具体例
⑴私生活上の行為
私生活上の飲酒運転等の道路交通法違反、迷惑防止条例等の性犯罪など、犯罪に該当する行為があった場合には、処分の軽重は別として、懲戒の事由となる品位を失うべき非行に該当すると考えられます。
また、不貞行為等の反倫理的な行為も、懲戒の事由となると思われます。
⑵民事事件で問題となった行為
これまでに問題となった行為のうち、民事事件に関するものは
- 無断で訴訟委任状を作成・行使した場合
- 作成名義人の死後に作成した文書の作成日付を生前に遡って作成、提出した場合
- 実際には裁判所に提出していない書類を、あたかも裁判所に提出したかの如く偽造した場合
- 事件処理を遅滞し、手続き等を取らなかった場合や時効を完成させた場合
などです。
このうち、事件処理の遅滞による懲戒が非常に多く、具体的にどのくらいの期間事件放置をすれば懲戒となるというラインはないものの、控訴・抗告等の不服申立期限を徒過させてしまった場合や、時効を完成させてしまった場合などには、懲戒となる危険性が非常に高いといえます。
⑶刑事事件で問題となった行為
刑事事件で問題となった行為としては
- 国選弁護人として選任された事件の弁護活動について、国選報酬以外に被告人らから報酬を受け取った場合
- 度重なる接見要請に応じず、被告人の了解を得ないまま控訴趣意書を提出した場合
などがあります。