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1 守秘義務とは
弁護士法第23条は、「弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。」と定め、弁護士職務基本規程第23条も、「弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない。」としています。
これは、弁護士が依頼者などから秘密を打ち明けてもらい、業務を行うために必要な基本的な義務と考えられており、秘密を漏らすことは、刑法の秘密漏示罪(第134条第1項)により刑罰の対象となる事象となっています。
2 「職務上知り得た」
守秘義務の対象となるのは、弁護士が職務上知り得た秘密に限られています。
そのため、弁護士が、弁護士業務以外で知った情報については守秘義務の対象とはなりません。
3 「秘密」
守秘義務の対象となる「秘密」は、一般的に知られていない事実であって①特に本人が秘密にしておきたいと考えられる事実だけでなく②一般人であれば秘密にしておきたいと考える性質を持つ事項も含まれると考えられています。
そのため、本人が秘密にしておきたいと特に主張していなかったとしても、一般人であれば秘密にしておきたいと考える性質の事項であれば、守秘義務違反となる場合があります。
また、職務基本規程が「依頼者について」と限定をしているのに対し、弁護士法はそのような限定がありません。
この点について、基本規程と同様に解釈するべきかどうか問題となりますが、日弁連では、依頼者以外の第三者の秘密やプライバシーについても守秘義務の対象となるとしています。
4 漏らす・利用する
弁護士職務基本規程では、秘密を漏らすことや利用することが禁止されています。
この「漏らす」は、第三者に開示することをいい、特定少数の者に開示するような場合でも「漏らした」と評価されます。
また、伏字のようにしたとしても、他の記載内容から個人が特定できるような場合には、やはり「漏らした」と評価されることがあります。
次に、「利用」とは、秘密の情報を基に一定の効果を得ることを目的として行為をすることを指します。
典型的には、顧問先の会社の情報を利用して、自己保有株式を売却して利益を得るような場合です。