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1 会則違反
弁護士は、弁護士法22条により、所属弁護士会及び日弁連の会則を守る義務があります。
そのため、会則に違反した場合が懲戒事由の1つとして挙げられています。
また、「会則」という形式だけに限らず、会期や規則等に違反した場合も、「会則違反」とされる場合があります(日弁連会則29条に「弁護士は所属弁護士会及び本会の会則、会規及び規則を守らなければならない」とされています)。
ただし、全ての会則等に違反した場合が懲戒の事由となるわけではなく、懲戒するに値する違反だけが懲戒事由となると考えられています。
2 弁護士職務基本規程の位置づけ
弁護士職務基本規程は、弁護士倫理を明文化したものとなります。日弁連会則第16条で「・・・・弁護士の道徳及び倫理並びに弁護士の職務の規律に関し必要な事項は、会規で定める。」とされており、弁護士職務基本規程はこの「会規」に当たることになります。
ですので、弁護士職務基本規程に違反したような場合であっても、全ての違反が懲戒に値するとは限りませんので、弁護士職務基本規程違反=懲戒事由とまではいうことはできません。
ただし、弁護士職務基本規程は、弁護士倫理の基本的なものを集めたものであることや、従前の「弁護士倫理」(平成2年に日弁連総会決議で定められたもの)と異なり、弁護士職務基本規程が「会規」の形式をとっていることなどから、懲戒事由になると認定される危険性は高いと言えます。
3 具体例
⑴会費滞納
弁護士は、所属単位会及び日弁連に対し、会費を支払う義務を負っています。
そして、日弁連では、会則第97条で「弁護士である会員が6か月以上本会の会費又は特別会費を滞納したときは・・・懲戒することができる」と定めており、6か月以上の会費滞納が懲戒事由となることを定めています。
滞納した金額が多額に及ばない場合や、立件後に納付したような場合では戒告の処分となっている事例もありますが、長期・多額の未納となると、退会命令が出されています。
⑵研修
各単位会では、弁護士に対して一定の研修の受講を義務付けている場合があります。また、倫理研修に関しては全ての弁護士の受講が義務付けられています(倫理研修規程第3条1項)。
このような研修を受講しないことは、会則違反となります。1回受講しなかっただけで直ちに懲戒事由に該当するかどうかは事案によるでしょうが、複数回、複数年にわたり受講しなかった場合には、懲戒事由となり、実際に懲戒された事案があります。
⑶業務停止中の弁護士活動
既に懲戒の処分により、業務停止を言い渡されていた場合には、弁護士としての業務を停止しなければならず、委任契約を解除するなどの必要があります。
にもかかわらず、継続して事件処理などを行った場合にも、会則違反として懲戒を受け、重ねて懲戒の処分を受けることとなります。