このページでは、対象弁護士(弁護士法人)に対して、懲戒処分等を行う方向性の不利益な処分が出た場合の不服申立て等について説明していきます。
このページの目次
1 単位会綱紀委員会の「審査相当」の決定について
単位会綱紀委員会で、「懲戒委員会に審査を求めることを相当とする」旨の議決がなされ、単位会が同旨の決定をした場合、これらの議決・決定に対しては不服申し立てを行うことができません。
法律にこれを許す規定がなく、綱紀委員会の決定はあくまでも中間的なものにすぎないからです。
2 単位会懲戒委員会の決定について
単位会懲戒委員会が行った何らかの懲戒をする議決に基づき、単位会が懲戒の処分を行った場合には、対象弁護士(弁護士法人)は、日弁連に審査請求を行うことができます。
審査請求を行うと、事件は日弁連懲戒委員会に移されます。
この審査請求は、行政不服審査法に概ね基づいて行われますので、審査請求を行うことができる期間は、処分を知った日から3か月以内となります。
また、審査請求前置主義を採用していますので、いきなり訴訟提起をすることはできず、まずは審査請求をしなければなりません。
3 日弁連綱紀委員会の決定について
⑴単位会懲戒委員会に送付する決定
単位会綱紀委員会が「懲戒委員会に審査を求めない」議決などを行い、それに基づき単位会が対象弁護士(弁護士法人)を懲戒しないことを決定したことに対して、懲戒請求人が異議申出をした場合、日弁連綱紀委員会は、異議申出に理由があると考える場合には、事件を単位会懲戒委員会に送付します。
異議申出に理由があるということは、懲戒相当という判断に傾いていることになるのですが、この異議申出を求める決定に対しては、不服申し立てを行うことはできません。
⑵日弁連懲戒委員会に審査を求める決定
また、日弁連自身が懲戒手続を開始した場合に、日弁連綱紀委員会が、懲戒委員会に審査を求める議決を行い、これに基づいて日弁連が同旨の決定をしたときも、これらの決定等については不服申し立てを行うことはできません。
これは、単位会綱紀委員会の審査相当の決定に不服申立てができないことと同じです。
4 日弁連懲戒委員会の決定について
⑴単位会が行った懲戒処分に対する審査請求について
単位会が懲戒処分を行い、これに対して対象弁護士(弁護士法人)が審査請求を行った場合で、日弁連懲戒委員会が審査請求を棄却した場合には、この棄却の決定の取消訴訟を東京高等裁判所に提起できます。取消訴訟の内容は、別のページをご参照ください。
この場合、取消訴訟の対象となるのは、単位会が行った懲戒処分ではなく、日弁連の裁決が対象となります。
⑵異議申出に対して理由を認め、懲戒処分にした決定について
単位会懲戒委員会が①対象弁護士(弁護士法人)を懲戒しない旨を議決し、単位会が同旨の決定をした場合か②単位会が行った懲戒の処分が不当に軽いと思料する場合には、懲戒請求人は異議申出を行うことができ、この異議申出は日弁連懲戒委員会で審査されます。
そして、日弁連懲戒委員会が審査を行った結果、異議申出に理由があると考えた場合には、事件を単位会に送付せず、自ら対象弁護士(弁護士法人)を懲戒する議決を行い、これに基づいて日弁連が対象弁護士(弁護士法人)を懲戒します。
この懲戒の処分に対しても、東京高等裁判所に対して取消訴訟を提起することができます。なお、この場合には、日弁連の処分自体を争うことになります。
⑶日弁連が行う懲戒処分について
日弁連自体が懲戒の手続開始し、日弁連懲戒委員会によっていずれかの懲戒を相当とする議決がなされ、それに基づき日弁連が対象弁護士(弁護士法人)を懲戒した場合には、東京高等裁判所に対して取消訴訟を提起することで争うことになります。
この場合にも、日弁連の処分自体を争うこととなります。
5 綱紀審査会の決定について
単位会綱紀委員会の行った「懲戒委員会に審査を求めない」議決に基づいてなされた対象弁護士(弁護士法人)を懲戒しない決定に対して、懲戒請求人が異議申出を行い、さらに日弁連懲戒委員会が異議申出を棄却(却下)した場合において、懲戒請求人は日弁連綱紀審査会に綱紀審査の申出を行うことができます。
この綱紀審査の申出に対して、綱紀審査会は、申出に理由があると考えた場合には、事件を単位会懲戒委員会に送付することとなっています。
この単位会懲戒委員会に送付する決定については、不服申し立てを行うことはできません。