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1 除斥期間
弁護士法第63条は、「懲戒の事由があつたときから3年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができない」と定めています。
このような規定が置かれている趣旨は、懲戒手続に付されるということが、弁護士の信用問題に関わることであるため、いつまでもその可能性があるというのは相当ではないからです。
この「3年間」の性質は、除斥期間です。そのため、時効の完成の猶予などの規定の定めはありません。
2 除斥期間の始期
それでは、「懲戒の事由があったとき」、すなわち除斥期間の始期はいつになるでしょうか。
継続する非行の場合には、行為が終了したときとなります。お金や物などを着服したような場合には、着服した時期ではなく、返還するまでの間は除斥期間が開始しません。
ただし、東京高判平成13年11月28日判時1775号31頁によると、弁護士と依頼者の委任契約が終了した場合で、終了時に金品等を返還しなかったことが問題となるような場合では、除斥期間の趣旨を鑑み、委任契約が終了した時点から除斥期間が開始するとしています。
3 懲戒の手続の意味
弁護士法第63条が開始できないとする「懲戒の手続」の意味については、登録換請求のときと同じ2つの考え方があります。
ただ、この除斥期間の解釈においても、現在の日弁連は、綱紀委員会の調査手続に付す時点を基準にして、除斥期間の認定を行います。
4 3年経過の意味
3年経過することにより、綱紀委員会の調査手続に付することができなくなります。そのため、3年経過後に調査手続に付されたような場合には、綱紀委員会は調査を進めることができず、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする議決を行うことになります。
反対に、3年経過するより前に綱紀委員会の調査手続に付され、調査手続中などに3年が経過したような場合は、弁護士法第63条の問題は生じません。懲戒の「処分」については、時効や除斥期間の問題は生じませんので、手続きさえ期間内に開始されていればよいということになります。