弁護士及び弁護士法人が懲戒される事由は、弁護士法第56条第1項に定めがあり、その事由は
- 弁護士法違反
- 所属弁護士会、日本弁護士連合会の会則違反
- 所属弁護士会の秩序又は信用を害した場合
- 職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があったとき
とされています。
①の典型的なものは、守秘義務(弁護士法23条)などの弁護士法20条から30条(弁護士法第4条 弁護士の権利及び義務 に関する部分)に違反する場合ですが、その行為は②や④にも該当する場合があります。弁護士法には、弁護士として基本的な義務が定められていますので、その法律に違反することは懲戒の対象となります。
なお、刑罰が定められているものについて、刑罰を受けることと懲戒は別の処分ですので、刑罰を受けても懲戒はなされます。
②は、会費の滞納などが典型例です。
弁護士法22条により、弁護士には会則を守る義務が課されていますので、その会則に違反した場合には懲戒の対象となります。
別のページで記載しますが、『弁護士職務基本規定』がこの「会則」に当たるかどうかが問題となります。
③は実質的には④と重なるところが多いようですが、最近では弁護士によるSNS上の書き込みなどが問題となっています。
いずれの場合もはっきりとした要件が定められておらず、懲戒を受けるかどうか微妙な事案においては③④に当てはまるかどうかが争われることになります。
①から④の事由の関係性についてはいろいろな考え方がありますが、①②③はあくまでも④の例示であると考えられると思われます。
このような考え方からすると、①や②の法律・会則違反の事由に該当した場合であっても、直ちに懲戒を受けるわけではないということになります。
④の場合などは、どうしても価値判断が必要となるため、「懲戒をするに値するほどの非行であるかどうか」と考えることになりますが、①や②の場合であっても、違反の程度や内容によっては必ずしも懲戒とする必要性までない場合もありうると考えられるからです。