
税理士が懲戒処分を受ける場合として法定されているものについて、架空の事例に基づいて解説します。
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故意に「嘘の申告書」を作った場合
税理士Aは、顧客である会社Xから、
「本当は1,000万円の売上があるのですが、500万円しかなかったことにして税金を減らしたい」
と頼まれました。
Aは事実を把握していたにもかかわらず、売上500万円として法人税の申告書を作成しました。
これは典型的な懲戒事由です。
税理士法45条1項は、税理士が故意に、真正の事実に反して税務書類を作成した場合などについて、税理士業務の停止または禁止の対象としています。ここでの「故意」とは、事実に反すること、または反するおそれがあることを認識して行うこととされています。
つまり、顧客に言われたからやったということは、処分を免除する理由とはなりません。
むしろ、税理士は税務の専門家ですから、不正を認識しながら申告書を作れば、重い責任を負うことになります。実際、税理士に対する懲戒処分には、他に「戒告」も用意されていますが、故意に事実と異なる書類を作成した場合には、戒告は選択できないようになっています。
「脱税の相談」に乗った場合
顧客Bから、
「税務調査が来そうです。どうすれば売上を隠して税金を少なくできますか?」
と相談された税理士A。
Aは、
「現金売上の一部を帳簿に入れなければ見つかりにくいですよ」
などと具体的な方法を教えました。
実際にA自身が申告書を偽造していなくても、問題になります。
税理士法36条は、税理士が不正に国税・地方税の賦課または徴収を免れることについて相談に応じる、いわゆる脱税相談を禁止しています。
脱税相談は、税理士法36条に違反する行為となりますから、同46条の「この法律…の規定に違反したとき」に該当しますので、懲戒の対象となります。
したがって、
「自分が申告書を偽造していないから大丈夫」
とは限りません。
故意ではなくても「相当の注意」を怠った場合
ここは税理士にとって非常に重要なポイントです。
税理士Aの事務所では、従業員Cが顧客の架空経費を長期間にわたって計上していました。
Aは最終的な申告書には目を通していましたが、領収書や請求書などの証憑をほとんど確認していませんでした。
実際には、少し確認すれば不正に気付ける状況でした。
A自身は、
「そんな不正が行われているとは知らなかった」
としても、適切なチェックをしていなかったことについて責任を問われる可能性があります。
税理士法45条2項は、税理士が相当の注意を怠って、事実と異なる税務書類を作成した場合を懲戒事由としています。
このような場合、知らなかったからといって処分を免れると言う事にはなりません。
顧客の税務調査を妨害した場合
顧客Dに税務調査が入ったところ、税務署から帳簿の提出を求められました。
税理士Aは、顧客Dに対して、
「この帳簿は見せないほうがいいです。別の場所に隠しておきましょう」
と指示しました。
これは、税務調査を妨害する行為として問題になります。
国税庁は、税務代理をする際に税務職員による調査を妨げる行為を「調査妨害」とし、税理士法37条の信用失墜行為に該当すると説明しています。
税理士は顧客の利益を守る立場ではありますが、だからといって、
「税務署に見つからないようにすること」
まで仕事にしてよいわけではありません。
以上のような場合が、典型的な違反例となります。
さすがにここまでの事案はないと思われますが、顧客の求めに応じ、税法上問題となるような行為をした場合には、懲戒の可能性が常に付きまといます。
税理士会からの呼び出し、国税局・税務署からの調査を受けられた場合には、一度弁護士にご相談ください。
