
【事例】
行政書士であるA氏は、いわゆる情報屋であるBからの依頼を受け、特に事件処理に利用するわけではないにもかかわらず、Cの戸籍謄本を職務上請求書を用いて取得した。
この取得に問題はないか。
(事例はフィクションです。)
【解説】
原則、戸籍謄本や住民票は本人や配偶者、直系の親族のみが取得できます。
これに対して、一部の士業では、職務上の必要性を理由に戸籍謄本や住民票を取得することができます。
このような取得方法のことを「職務上請求」と呼びます。
このような職務上請求には法律上の根拠があり、例えば戸籍謄本の場合には戸籍法10条の2第3項で
「第一項の規定にかかわらず、弁護士(弁護士法人及び弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。次項において同じ。)、司法書士(司法書士法人を含む。次項において同じ。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む。次項において同じ。)、税理士(税理士法人を含む。次項において同じ。)、社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む。次項において同じ。)、弁理士(弁理士法人を含む。次項において同じ。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法人を含む。)は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該業務の種類、当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称及び当該依頼者についての第一項各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。」
という定めが置かれています。
この職務上請求を行う場合には、法律に記載の通り、資格名や士業の氏名・住所の記載が求められますが、それ以外にも定めがあります。
それは、「職務上請求用紙」を使用することです。
書面を交付する役所の側からすると、請求が真正な者かどうかの判定は極めて困難です。極端な場合、目の前の人物が本当に弁護士なのかどうかさえはっきりしません。
このような難点を解消するため、士業団体では「職務上請求用紙」という、職務上請求をするために必要な特別の用紙を作成し、その用紙で行われた職務上請求のみが真正な請求であると取り扱われています。
役所の側からすると、職務上請求用紙を用いて請求されていれば、本物の士業であると信頼しやすいことになります。
この職務上請求用紙は、購入時も厳格に取り扱われており、すべての書類に通し番号が振られています(弁護士会のもの)。
つまり、ある職務上請求用紙が使われた場合、その用紙を誰が購入したのかを追跡できる仕組みとなっています。
このように、職務上請求は、一定の要件に基づいて、必要性の認められる場合にのみ使用することができるものですから、事例のように理由なく職務上請求をすることは許されません。
職務上請求用紙の不正使用は、各士業団体で重い処分となることが予定されているほか、不正使用に基づいて逮捕されたような事例もあります。
不正使用は極めて重い行為ですので、十分に注意しましょう。
