懲戒手続が開始された場合、どのように対応しなければならないか

【事例】

 ある日、X弁護士が事務所にいると、弁護士会から書留で書類が送られてきました。

 中身を見ると、元依頼者から懲戒請求を受けたため、答弁書を提出するように依頼する弁護士会の綱紀委員会の書類が入っていました。

 X弁護士はどのように対応すればよいのでしょうか。

【解説】

 弁護士法58条によれば、何人も懲戒請求ができる旨が記載されています。ただ、懲戒請求は必ずしも私人により開始されるわけではなく、検察庁や裁判所によって請求されることもあるほか、単位会自体が懲戒請求を行う「会立件」という形式も存在します。検察庁、裁判所の請求や、会立件の場合には事前に何らかの問題が生じていますので、自分自身でも何となく請求されることが予想できるところですが、私人による懲戒請求の場合にはいきなり請求がなされるケースが多いのではないかと思われます。以下では私人による請求のケースを念頭に置いていきます。

 弁護士会に懲戒請求がなされると、大量請求事件のように明らかに理由がないような場合を除いて全て単位会綱紀委員会に事件が係属します。そして、綱紀委員会から対象弁護士に対して答弁書の提出を求める書類が届きます。

 おおよその感覚ですが、懲戒請求書が弁護士の手元に届いたときから約1ヶ月後くらいが答弁書の提出期限とされていることが多いように思われます。そのため、答弁書の提出までの期間にはそれほど猶予がないと言えます。

 綱紀委員会に答弁書を提出すると、場合によっては綱紀委員会から追加の書類の提出を求められることがあります。なお、委員会は様々なことを求めてきますが、おそらく多くの単位会の会則で、求めに応じることを義務とする規定が存在すると思われます。そのため、綱紀委員会から提出を求められたものを提出しないことは、正当な理由がない限り別途会則違反の事由を構成することになります。

 物件の提出の後、綱紀委員会から呼び出しを受け、直接聞き取りを受ける機会があります。このとき、大規模会では綱紀委員会の委員のうちの一部(2名が多いです)から聞き取りを受けます。

 この聴き取りの後、綱紀委員会(大規模会では綱紀委員会内の部会となります)で議決がなされます。

 綱紀委員会は、あくまでも前段階の審査機関ですので、結論は事案を懲戒委員会に付するか、付さないかのいずれかとなります。綱紀委員会で懲戒処分を決定するものではありません。

 ですので、懲戒請求を受けた弁護士としては、まずは答弁書の作成に取り組むことになります。ただ、多くの弁護士にとって初めて作成する答弁書であると思いますので、どのように作成してよいのか分からない点もあると思われます。そのため、懲戒請求書が送られてきた方は、一度第三者に相談していただくのが適切であろうと思われます。

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