弁護士資格と懲戒制度

1 弁護士資格

 弁護士となるためには、日本弁護士連合会に備えてある弁護士名簿に登録されなければなりません(弁護士法8条)。
 そして、この弁護士名簿に登録されるためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
①司法修習生の修習を終えた場合(弁護士法4条)
②特例の要件を満たし、一定の研修を修了したと認定された場合(弁護士法5条)
③最高裁判所裁判官であった場合
 このうち②の特例には、司法修習生となる資格(司法試験合格)を得た後、一定期間法律に関係のある役所(内閣法制局など)や法律学の教授を務めた場合のほか、検察庁に検察事務官として入庁し、特例検事となって5年以上経過した場合などが定められています。
 なお、かつては司法修習生となる資格を持たなくても、法律学の教授等を一定期間務めたような場合でも弁護士となる資格を得ることができましたが、現在はそのような規定はありません。
 また、①②③のいずれの要件で弁護士となる資格を得たとしても、弁護士名簿に登録されてしまえば、すべて同じ弁護士となります。
 弁護士へのなり方によって職務が制限されるようなことはありません。

2 弁護士自治

 いわゆる「士業」と呼ばれる職業は複数あります。弁護士のほかに、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士など、国家資格が定められている職業は複数存在します。
 しかし、弁護士とその他の士業で異なるとされている点が「弁護士自治」と呼ばれるものです。
 たとえば、司法書士に対して処分を行うのは「法務大臣」となっています(司法書士法47条)。また、行政書士は「都道府県知事」(行政書士法14条)、公認会計士は金融庁に設置された「公認会計士・監査審査会」が処分を行うこととなっています。
 このように、他の士業では行政機関が監督官庁とされています。
 これに対し、弁護士に対する処分を行うのは各弁護士会・日本弁護士連合会という弁護士の組織が行うこととされています。
 弁護士はときとして裁判所・検察庁や各種行政機関と対立することがあります。そのようなときに、当該組織に監督権限を握られているような状況となれば、十分対抗できない可能性があります。
 そのため、弁護士については監督官庁を置かず、弁護士会自らが会員である弁護士に対して処分を行うという法制度が採用されました。

3 懲戒制度

 このような弁護士自治を確保するため、弁護士法では、弁護士会・日本弁護士連合会自らが行う弁護士の懲戒に関する規定が定められることとなりました。
 たとえば、弁護士だけで弁護士に対する懲戒を判断しないよう、裁判官、検察官、学識経験者(大学の法学部の教授など)が懲戒の判断に関わるようになっています。
 弁護士会による懲戒制度が、弁護士という職業の特徴ということができます。

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー 秘密厳守の無料相談