このページの目次
1 利益相反
弁護士法第25条は、弁護士が職務を行い得ない事件を定めています。
同様に、弁護士職務基本規程第27条、28条も職務を行い得ない事件を定めています。
前回に引き続き、この職務を行い得ない事件を解説していきます。
2 弁護士法第25条第3号
弁護士法第25条第3号は、職務を行い得ない事件として「受任している事件の相手方からの依頼による他の事件」を定めています。
この規程が想定する状況は、弁護士がAとBが対立する事件のA代理人として受任をしている際、問題となっている事件とは別の事件についてBから依頼を受けることを禁止するというものです。
仮にこのような事態で受任が許されると、Bが報酬金を多数支払うなどして弁護士を懐柔し、A対Bの事件の結論に影響を与えることが可能になってしまいます。
そのため、このような事態を防ぐため、弁護士の受任が禁じられています。
ただし、この3号の規定からは、本人(この場合であればA)の同意があれば受任禁止が解除されることとなっています。
なお、ここでいう「受任している事件」とは、現に受任している事件を指しており、過去において受任していて終了した事件は含みません。
3 弁護士法第25条第4号
弁護士法第25条第4号は、職務を行い得ない事件として「公務員として職務上取り扱った事件」を定めています。
典型的には、検察官、裁判官が退官した後弁護士となった際に、検察官・裁判官として取り扱った事件の受任が禁止されています。このような事件の受任は、明らかに公正性を害するからです。
ただ、法が禁止するのは「公務員」として取り扱った事件ですので、検察官や裁判官に限られません。国家公務員、地方公務員、常勤非常勤を問わず、公務員として扱った事件すべてが禁止されます。ですので、公証人として扱った事件などの受任も禁止されることになります。
4 弁護士法第25条第5号
弁護士法第25条第5号は、職務を行い得ない事件として「仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件」を定めています。
ここでの「仲裁手続」とは、仲裁法で定める仲裁手続を指しています。仲裁法上の仲裁人には、双方から事件内容を聴取するなどの権限が与えられているため、公平性の観点から5号の規定が置かれていると考えられます。