係争権利の譲り受けが訴訟法上問題となった事案

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1 事案の概要

 XはYに対して土地を貸していたが、この賃貸借契約に対してXが契約解除の意思表示をした。
 しかしその後もYは延滞賃料を支払わず、この賃貸借契約に基づく紛争は解決していなかった。
 A弁護士はXからこの紛争について訴訟委任を受けていたが、その途中で訴訟の目的物である土地の一部を買い受けることを予約した。
 このような予約をしている弁護士の行った訴訟行為が問題となった。
(最判昭和35年3月22日の事案)

2 判旨

 ところで、弁護士法二八条は弁護士が事件に介入して利益をあげることにより、その職務の公正、品位が害せられまた濫訴の弊に陥るのを未然に防止するために設けられた規定であるから、たとえ弁護士が同条に触れる取引行為をしたとしても、その場合に右取引行為の私法上の効力が否定されまたその弁護士が同法七七条所定の刑罰を受けるのは別論として、右取引行為の目的となつた権利に関する訴訟委任およびこれに基く訴訟行為が同二八条により直ちに無効とされるものではないと解するのを相当とする。されば、弁護士AがXとの間でした右土地売買予約が前記法条に違反するとしても、これがためXがA弁護士に対してした訴訟委任およびA弁護人がその代理人としてした訴訟行為は無効となるものではない

3 説明


 今回の行為が弁護士法28条に違反すること自体は認定されています。
ただ、第1審の東京地裁も「右法条〔28条〕は同法第二十五条のように弁護士の職務活動を制限するものではなくて、弁護士の品位の保持と職務の公正な執行を担保するために抜本的に弁護士の係争権利の譲受を禁止し、その違反行為はこれを無効とする趣旨の規定であるから、右売買の予約が仮に同法第二十八条に牴触するものとしても、AはこれがためにXから本件訴訟を受任することができなくなるものではない」としています。つまり、あくまでも私法上の問題である以上、訴訟行為を無効とする理由はないというものです。
 もっとも、このような行為が懲戒事由に該当することには注意を要します。

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