【弁護士が解説】薬剤師に対する処分はどのようになされるのか

【事例】

 薬剤師であるAさんは、勤務中処方箋を持ってきた患者の態度にイライラしてしまったことから、つい袋を投げてしまいました。

 たまたまそのことを同僚に目撃されており、Aさんの行為は暴行罪として警察に被害届が提出されました。

 最終的にAさんは罰金10万円を支払っています。

 このとき、Aさんの薬剤師免許はどうなるのでしょうか。

【解説】

1 薬剤師に対する行政処分

薬剤師法8条によると「薬剤師が、第五条各号のいずれかに該当し、又は薬剤師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。」とされています。

 そして、5条は「一 心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの 二 麻薬、大麻又はあへんの中毒者 三 罰金以上の刑に処せられた者 四 前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者」として、4つの事由を定めています。

 3号を見ると「罰金以上の刑に処せられた者」とあります。これは罪名を問いませんので、たとえ職務に関係のない私生活上の出来事で罰金を受けたとしても、薬剤師免許に影響が生じる可能性があります。

2 行政処分の実情

 薬剤師に対する行政処分は、医道審議会(薬剤師分科会薬剤師倫理部会)で議論されています。

 そして、その処分の内容は、公表されており、おおよそ1年に1回程度まとめて処分が出されていることが分かります。

 たとえば、直近の令和7年1月29日の会議では、2名に対して行政処分が出されいます。

 一つ一つ見ていくと、Aさんと同じ罪名の「暴行」では、戒告になっているものがあります。

3 Aさんの場合はどうか

 Aさんの場合、罪名は暴行と、傷害より軽い罪です。しかし、患者に対する暴行であるため、私生活上の行為よりは重く判断される可能性が高いと思われます。これは行政処分だけではなく、刑事処分を考える上でも同様です。

 そのため、免許に対する処分を回避するためには、まず被害者の方に謝罪をし、示談をした上で刑事罰を回避することが必要となります。

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