【弁護士が解説】組織内弁護士が、自身の組織内で違法な行為が横行していることを発見した場合にはどのように対応すればよいか

【事案】

 X社は、インフラ部門で大きな利益を上げ、業界最大手に数えられていた。

 しかし、X社内部では、実は不正な取引が行われており、その結果見かけ上利益が大きくなっているような状況であった。X社では、自社の商品をグループ企業に買い注文をさせ、あたかも売買が成立したかのように装いそれを売却したことにしていた。しかし、実際にはグループ内での売買であるため、商品自体は一切動いていなかった。このようなスキームを利用し、需要が増大しているように装って単価を上昇させ、利益を上げるという方法が10年以上にわたって続けられていた。

 X社の法務部門にいる弁護士として、このようなスキームを発見した場合にはどのように対応すべきであるか。

【解説】

 事案のスキームは、実際にアメリカで行われたエンロン事件を参考に、簡略化したものになります。

 そして、このエンロン事件では、会計事務所や顧問法律事務所も粉飾決算に手を貸し、全体で違法なスキームを継続していたことが明らかになりました。担当していた会計事務所は大手の事務所であったものの、この件により信用を失い、最終的には閉鎖されるに至っています。

 上記の事案では、これと異なり、社内に弁護士がいるという設定になっています。

 近年、弁護士の職域拡大の結果、企業内の弁護士が増加してきました。ただ、企業内の弁護士は、会社に対する義務を負っているのと同時に、弁護士としての義務(倫理)も負っています。

 弁護士職務基本規程50条は「官公署又は公私の団体(弁護士法人を除く。以下これらを合わせて「組織」という)において職員若しくは使用人となり、又は取締役、理事その他の役員となっている弁護士(以下「組織内弁護士」という)は、弁護士の使命及び弁護士の本質である自由と独立を自覚し、良心に従って職務を行うように努める。」と定め、同51条は「組織内弁護士は、その担当する職務に関し、その組織に属する者が業務上法令に違反する行為を行い、又は行おうとしていることを知ったときは、その者、自らが所属する部署の長又はその組織の長、取締役会若しくは理事会その他の上級機関に対する説明又は勧告その他のその組織内における適切な措置をとらなければならない。」と定めています。

 あくまでも、①担当する職務に関するものに限定され、たまたま知った者は含まないこと②法令に違反する行為を行い又は行おうとしている場合に留まり、行うおそれがある場合を含まないこと③内部での適切な措置を求めるにとどまり、外部通報まで求められていないこと等には注意が必要ですが、それでも、組織の一員であるということを理由に、組織の意向をそのまま受け入れてよいということにはなりません。

 ですので、事案のような違法行為に気が付いた弁護士は、法令違反となることを等を説明し、違法行為を行わないよう説得することが必要であると言えます。

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