【弁護士が解説】接見室内で被疑者・被告人に電話をさせるとどのようになるか

【事案】

 X弁護士は、Aの国選弁護人として選任され、Aが逮捕されているB警察署で接見を行っていた。

 Aはいわゆる特殊詐欺で逮捕され、他にも共犯がいると考えられるほか、接見等禁止決定が付されていた。

 面会中、AはXに対して、「先生は面会室に携帯電話を持ってきていますよね。俺の彼女とどうしても話がしたいから、先生が電話をかけて、アクリル板越しに電話機を近づけて、電話で話をさせてくれませんか」と依頼を受けた。

 このような依頼を受けて問題はないだろうか。

【解説】

1 面会室内での電子機器の利用について

 警察署や拘置所で接見を行う際、携帯電話を預けるように言われることがあるほか、パソコンなどの電子機器を利用する際には事前に申し出るように言われることがあります。また、このような指示に従わなかった場合、面会の中が注されるといったケースもあるようです。

 このような取り扱いに対し、日弁連は一貫して対抗する姿勢を見せていると思われます。確かに、現在刑事事件では電子データが証拠開示されることも多いところ、仮に電子機器の利用が禁止されるとすれば、電子データを示しながらの本人と話すことができなくなってしまい、防御上の不利益は極めて大きいものとなってしまいます。その他にも、現在はパソコンでメモを取ることもそう珍しいことではありませんから、電子機器の利用一切を禁止しようとする流れには対抗する必要があります。

2 面会室内での電話の利用

 しかし、電話(LINE通話なども含みます)機能を使用するという話になると、問題の争点が変わってきます。

 弁護士との間では秘密交通権が保障されていますが、これはあくまでも被疑者・被告人と弁護士の間で防御を行うために認められた権利です。そのため、被疑者・被告人と弁護士以外の人物との間での秘密交通が認められているわけではありませんから、弁護士が外部へ電話をかけ、被疑者・被告人とその者を会話させるというようなことは認められません。

 今回の事例の場合、Aは特殊詐欺で逮捕されており、他に共犯者がいるということが容易に推察されます。Aが彼女であると称する人物が本当に彼女であるかどうかも分かりませんし、仮に彼女であったとしても事件関係者ではない保証はありません。そうすると、弁護士が罪証隠滅に加担することになる可能性もあります。

 また、今回のAには接見等禁止決定が付されています。弁護士以外の者とは面会等をさせないという状態ですから、仮に会いに来たとしても彼女は面会できない状態です。そのような状態にある被疑者・被告人と電話をさせるというのは、接見等禁止決定の趣旨にも大きく反してしまいます。

 ですので、仮にこのような依頼があった場合、X弁護士は必ず断らなければなりません。また、これに応じてしまった場合には、業務停止以上の重い処分が予想されます。最近でも類似のケースで処分を受けていることがありますので、注意を要します。

 

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