【事例】
弁護士のXさんは、車を運転中に交通事故を起こしてしまいました。
被害者には相当重いけがが生じてしまい、公判請求の上禁錮刑が言い渡されました。
この時、弁護士資格はどのようになるのでしょうか。
【解説】
弁護士法7条1号には、「禁錮以上の刑に処せられた者」が弁護士となる資格を有しない者、つまり欠格事由として定められています。
そして、弁護士法17条1号により、第7条各号のいずれかに該当した場合には、弁護士名簿の登録を取り消されなければならないとなっています。
ここで条文は「禁錮以上」と定めているのみです。そのため、執行猶予付き判決か実刑判決かの区別をしていません。つまり、仮に執行猶予付きの判決であったとしても、禁錮以上の刑の言渡しを受けたことになりますから、登録取消事由に該当することになります。
また、同じく専門職である医師の場合、このような刑罰法令該当自由があったとしても、厚生労働大臣は処分をすることが「できる」と定めており、仮に執行猶予付き判決であったとしても処分がなされない可能性が存在しています。しかし、弁護士法は「取り消さなければならない」と定めており、弁護士会には裁量が認められていません。つまり、執行猶予以上の判決があった場合には、必ず弁護士資格が取り消されるということになってしまします。
では、罰金刑になった場合はどうでしょうか。この場合、1号の「禁錮以上」には該当していません。そうすると、これだけで直ちに登録取消になるということにはならないと言えます。
しかし、弁護士の懲戒事由は「職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があったとき」とされており、罰金刑であるからといって処分を受けないということにはなりません。ただ、交通事故は過失犯であり、責任非難の程度が故意犯より大きいとは言えませんから、故意犯に比べて処分が重くなるということはないと思われます。対して、飲酒運転や盗撮といった故意犯は、罰金刑であっても業務停止以上の重い処分が予想されますので注意が必要です。