【事例】
医師であるAさんは、プライベートで車を運転中・・・
①飲酒運転をして現行犯逮捕されてしまいました
②交通事故を起こし、被害者が全治1週間のけがをしました
③交通事故を起こし、被害者が亡くなりました
それぞれの場合、Aさんの医師免許にはどのような影響があるのでしょうか。
【解説】
1 医師の資格の欠格事由
医師法7条は、「医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。」としています。そこで、4条を見ると、「三 罰金以上の刑に処せられた者」と書かれています。
そのため、医師免許を保有している者が、罰金以上の刑(これは、医業に関する罪で罰金以上の刑を受けた場合に限りません)を受けた場合には、医師免許取消や医業停止の処分を受ける可能性があります。
2 各事例の検討
①飲酒運転のケース
飲酒運転の場合、多くは現行犯逮捕されています。逮捕している事件の場合、警察は報道機関に逮捕者の氏名等を伝えることが一般的(ニュースでよく見る情報は、このように伝えられています)です。医師等であれば報道されてしまう可能性も極めて高いと言えるので、医師免許以前の問題として、報道により職を失う可能性が高いと言えます。
問題の医師免許ですが、飲酒運転の初犯であれば、酒酔い運転(アルコールの数値に限らず、まともに運転できていないような状態です)でなければ、略式罰金として罰金刑になることが多いと言えます。道路交通法違反での罰金ですので、必ずしも医師免許の処分を受けるケースが多いとは言えません。しかし、そもそも報道等をされてしまうと、厚生労働省や都道府県管轄部局も事件を認知しますから、「医師としての品位を損するような行為」として処分を受ける可能性は十分あります。
②交通事故のケース
過失による交通事故は、どうしても回避できない場合があります。もちろん、全く回避不可能というようなケースであれば、過失犯として罪に問われることはありませんが、よそ見のようなケースではやはり過失運転致傷の罪が成立します。
とはいえ、全治1週間程度であれば、不起訴処分となり、前科がつかないケースも多いと言えます。前科がつかなければ、担当部局に事故のことが伝わることは多くないので、医師免許の処分がないこともほとんどだろうと思われます。
③交通死亡事故のケース
とはいえ、死亡事故となると、それなりに大きく報道されることもあります。過失犯であれば逮捕されないことも十分ありますが、それほど簡単に不起訴になるわけではありません。
実際、過失運転致死で、被害者に特に落ち度がないようなケースであれば、公判請求(正式な裁判を行うこと。テレビで見るような裁判です)となる場合が多いと言えます。
そうすると、医師であっても罰金以上の刑(多くの場合は禁錮刑です)となってしまいます。
ただ、事故である以上、医師の資質の問題性とは関連が低いことが多いと言えます。そのため、厚生労働省が示している考え方においても、戒告処分とされています。
いずれにしても、道路交通法違反や交通事故を起こしてしまった場合、速やかに弁護士に相談し、今後の見通しや、取り得る策を講じたうえで、医師免許への影響を最大限小さくする必要があります。まずは弁護士にご相談ください。