医師が刑事事件を起こしてしまった場合、その内容によっては医師免許の停止や取消しといった行政処分を受けることがあります。ここでは、法律的な根拠、処分の種類、具体的な事例を交えて解説します。
このページの目次
1. 医師免許に関する法律的枠組み
■ 医師法第4条(欠格事由)
医師免許の交付を受けられない人について定めています。すでに免許を持っている医師でも、以下に該当すれば免許の取り消しの対象になります。
特に重要なのが以下の項目です:
- 罰金以上の刑に処せられた者(執行猶予を含む)で、医師として不適切と判断される場合。
2. 行政処分の種類
犯罪を犯した医師には、厚生労働省が以下のような行政処分を行います。
種類 | 内容 |
---|---|
免許取消 | 医師としての資格を完全に失う |
業務停止 | 一定期間、診療行為を行えない(3年以内) |
戒告 | 注意であり、免許や業務には影響なし |
3. 医師が犯罪を犯した場合の処分基準(概要)
厚生労働省は、犯罪の種類や内容、反省の有無などを考慮して処分を決定します。たとえば:
- 医療に関連する事件や、重大犯罪(傷害致死、不正手術など) → 免許取消の可能性が高い
- 性犯罪、児童ポルノ等の重大な倫理違反 → 免許取消または長期の業務停止
- 交通事故(酒気帯び・ひき逃げ) → 内容により戒告もありうるが、ひき逃げであれば業務停止
- 軽微な窃盗や暴行(示談成立済み) → 戒告、あるいは処分なしのケースも
4. 実際の事例
直近に行われた医道審議会では以下のような事例がありました。
- 免許取消・・・・・・・・・1件(強制わいせつ致傷1件)
- 医業停止2年・・・・・・・1件(麻薬及び向精神薬取締法違反1件)
- 医業停止1年6月・・・・・1件(過失運転致傷、道路交通法違反1件)
- 医業停止6月・・・・・・・2件(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反(兵庫県)1件、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反1件)
- 医業停止3月・・・・・・・2件(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反(兵庫県)1件、青森県迷惑行為等防止条例違反1件)
- 医業停止2月・・・・・・・1件(医師法違反1件)
- 戒告・・・・・・・・・・・4件(1.過失運転致傷2.過失運転致傷1件、過失運転致傷、道路交通法違反1件、傷害1件、不正競争防止法違反1件)