【弁護士が解説】保証人と主債務者の両方の代理人となることは許されるか

【事例】

 X弁護士は、Aさんから貸金返還請求をされている旨の相談を受けました。見ると、Aさんを被告として訴えが提起されており、Aさん自身も金銭を借りた事実や、現時点で返済をしていないことを認めています。

 ところで、この借金をするにあたり、Aさんは自身の兄のBさんを連帯保証人としていました。Aさん自身には支払い能力はなく、今後Bさんも訴えられる可能性は相当高い状況にあると思われました。Aさんからは「兄も一緒に受けてあげて欲しい」と依頼されています。

 X弁護士として、Bさんの事件も受任することに問題はないでしょうか。

【解説】

 今回の問題は、主債務者の代理人が、連帯保証人の代理人を兼ねることが許されるかという問題になります。主債務者と保証人の関係では、どちらかが返金すれば、その分相手方が返金を免れるという形になりますので、一方の出捐で他方が得するという関係を見ると、利益相反思想にも思われます。ただ、時効の援用や弁済の抗弁など、双方に共通する主張ができる可能性もあります。

 しかし、主債務者と保証人は、求償の場面以外では「相手方」という立場にはなりません。そのため、弁護士職務基本規程28条3号が問題となり「依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件」に該当することになります。

 そのため、同条の柱書にある「第三号に掲げる事件についてその依頼者及び他の依頼者のいずれもが同意した場合」には、受任をすることができることになります。

 もっとも、途中で利益相反が顕在化した場合には、双方の代理人を辞任することになります。そのため、最初に委任を受ける際には、場合によっては双方辞任になる可能性を十分伝えた上、受任をする必要があります。

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