【弁護士が解説】会社の顧問弁護士をしているときに、会社の役員・従業員とはどのような関係になるのか

【事例】

 X弁護士は、長年にわたり株式会社Aの顧問弁護士を務めてきており、代表取締役を含む役員らの日常の相談や、会社の経営等について相談に乗ってきた。

⑴役員パターン

 しかし、あるとき、会社役員と株主の間に深刻な利害対立が生じ、役員らは株主代表訴訟を提起されるに至った。

 そのため、役員らは訴訟代理人を選任する必要が生じたが、これに普段から会社のことをよく知っているX 弁護士が適任ではないかという話が持ち上がった。

⑵従業員パターン

 あるとき、従業員のBが逮捕されたという報道がなされた。A社としても早急に対応する必要があったことから、X弁護士に依頼し、Bに面会してもらうこととした。

 話を聞いたA社幹部らは、Bのことを思い、このままXにBの弁護人になってもらうことを考えた。

 X弁護士として、これらの依頼を受任しても問題はないか。

【解説】

 会社の顧問弁護士を務めている場合、弁護士職務基本規程28条2号の「継続的な法律事務の提供を約している」状態にあるということができます。そのため、「会社」を相手方とする事件を受けることは、同号に該当し、同条但書の場合(依頼者・相手方の双方の同意がある場合)を除いては、職務を行ってはならないことになります。

 ⑴のようなケースの場合、株主代表訴訟の役員側代理人を務めることは、仮に株主=会社であると考えると問題が生じるということになります。たしかに、株主代表訴訟は、個々の株主の直接的利益を満たすものではなく、あくまでも会社の利益を保護するための制度です。その訴訟において、役員側の代理人となることは、会社を相手方にしているのと同じ状況になりますので許されるものではありません。

 しかし、会社法849条により、会社は役員側に訴訟参加することが許されています。そうすると、株主対会社・役員という構図の場合もあり得ますので、このような場合には役員の代理人となることが許されるのではないかという疑問もあります。これについては、『解説 弁護士職務基本規程(第3版)』では消極的な見解が取られています。このケースでも会社の代理人となることは問題ないものの、役員の代理人となることは利益相反の可能性が消滅しないとしています。ですので、受任を差し控える方が良いものと思われます。

 ⑵のケースの場合、会社が依頼者となり、従業員を弁護するというものです。従業員の起こした事件の内容が会社と全く関係ないのであれば、従業員と会社の間には何らの関係もないように思われます。

 しかし、弁護士は弁護士法上の守秘義務を負っていますので、逮捕された従業員から聴取した事項については、本人が同意しない限り会社関係者に告げることができません。対して、会社から顧問弁護士として従業員の処遇について尋ねられた場合には、会社の立場から検討してしまうことになります。こうなると公平性を疑わせる状況になりますので、場合によっては問題化する可能性があります。やはり、知り合いの弁護士に依頼するなどした方が妥当であると思われます。

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