【弁護士が解説】ケアマネージャーが交通事故を起こすとその資格はどうなるか

【事例】

 ケアマネージャーであるAさんは、ある日通勤途中、自動車で交通事故を起こしてしまいました。

 幸い被害者の方は全治2週間程度のけがではあったものの、警察の方からは事件を検察庁に送ると言われました。

 Aさんはどのような刑事罰を受け、それによってケアマネージャーの資格はどうなるのでしょうか。

【解説】

1 ケアマネージャー資格について

⑴欠格事由

 国家資格が何らかの制限(剥奪されたり、効力が一時停止したり)を受けることになる事由のことを「欠格事由」と呼んでいます。欠格事由は、資格を取得するときに問題となっていますが、同様の事由が生じた場合には資格を取消すということになっています。

 ケアマネージャーの資格は、介護保険法にその定めがあり、正式名称は「介護支援専門員」となっています。

 介護保険法69条の39第1号で「第六十九条の二第一項第一号から第三号までのいずれかに該当するに至った場合」には、都道府県知事は介護支援専門員の登録を消除(削除のことです)しなければならないとしています。

 そこで、69条の2第1号から3号を見ると、次のような記載があります。

一 心身の故障により介護支援専門員の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
三 この法律その他国民の保健医療若しくは福祉に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者

 これがいわゆる欠格事由です。なお、これ以外にも介護保険法では定めがあります。

⑵刑事罰と国家資格

 さて、それは本題の刑事罰を受けた場合の資格について検討します。

 2号で「禁錮以上の刑」と定められています。刑事罰の重さは死刑>懲役>禁錮>罰金>拘留>科料と定められていますので、禁錮以上の刑は死刑・懲役刑・禁錮刑を指します。反対から言えば、罰金刑であればこの規定に該当しないことになります。つまり、交通事故によって罰金刑を受けた場合や当然ですが不起訴処分になった場合には、資格を取消されたりすることはないということになります。

 それでは禁錮刑を受け、その刑に執行猶予が付けられた場合はどうでしょうか。

 執行猶予とは、裁判が確定した後すぐに刑務所等に収容されるのではなく、執行猶予期間中無事に過ごせば収容されないという判決です。反面、執行猶予中に再び裁判を受けるようなことがあれば、基本的には刑務所に行かなければならない(もう一度執行猶予になることはほとんどない)という判決です。たとえば「禁錮1年執行猶予3年」という判決の場合、「もし3年間何もせずに過ごすことができれば、刑務所にはいかなく構いません。ただし、3年以内に再び裁判を受けるようなことがあれば、新しく犯した罪の刑罰に、追加して1年刑務所に入ってもらいます」という意味になります。

 話を戻すと、交通事故で人をけがさせた場合、余程重大な事情(前科があるとか、飲酒運転であるなど)がない限りは執行猶予がつくことがほとんどです。しかし、先ほどの欠格事由の条文には執行猶予を除外する規程はありませんから、仮に執行猶予がついたとしても資格は取り消されることになります。

 交通事故は誰でも起こしてしまう可能性があるものですが、一つ間違えると運転免許以外の資格さえ剥奪されてしまうものになります。これを回避するためには初動の対応が重要です。資格のことでご不安な方は、いち早く弁護士にご相談ください。

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー 秘密厳守の無料相談