【弁護士が解説】いわゆる事件あさりは問題となるのか

【事例】

 ある有名人Aが逮捕されたというニュースが流れました。

 これを見ていたX弁護士は、Aに会って、事件を受任したいと考え、Aがいる警察署に面会に行きました。

 このような行為は問題とならないでしょうか。

【解説】

 Aが逮捕中であるため、弁護人となろうとする者としてX弁護士が面会を行うこと自体は、刑事訴訟法上も問題ありません。たとえば、ひとめAを見てみたいというような動機などの場合には、そもそも弁護人になろうとする動機さえありませんから、刑事訴訟法の潜脱に当たり、懲戒事由となる可能性が高いと言えます。

 それでは、何の依頼を受けてもいないのに、逮捕されていない人に面会しに行くことは問題ないのでしょうか。

 弁護士職務基本規程10条では「弁護士は、不当な目的のため、又は品位を損なう方法により、事件の依頼を勧誘し、又は事件を誘発してはならない。」としています。禁止されているのは不当な目的がある場合か、品位を損なう方法により依頼の勧誘等を行うことです。

 ここでの「品位を損なう方法」とは、弁護士の社会的評価や信頼を損なう方法であると考えられており、アメリカのアンビュランスチェイサーなどがこれに該当します。事件が起きたという場所に登場し、関係者に依頼を働きかけるような行為は、禁じられるというべきです。

 なお、刑事弁護委員会などでは、一定の重大な事件の報道に接すると、本人からの接見要望などが無くても委員会による弁護士の派遣を行っている会も少なくないのではないかと思われます。これは事件の受任を目的とするものではないほか、被疑者の防御権行使のためという目的が形式からも明白であるため、基本規程10条には反しません。

 以上のような理由からすると、X弁護士の行為は、何らかの処分を受ける可能性がある行為といえます。このような興味本位の行為は十分に慎む必要があります。

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