各委員会の判断に対する不服申立て

それでは、ここで各委員会の判断についての不服申し立てについて整理したいと思います。

第1 単位会からスタートする懲戒事件

1 単位会綱紀委員会の判断

⑴事案を懲戒委員会に付するとの判断
 対象弁護士は、これに対して不服申し立てを行うことはできません。
⑵事案を懲戒委員会に付さないとの判断
 懲戒請求者は、日弁連綱紀委員会に対して異議の申出を行うことができます。

2 単位会懲戒委員会の判断

⑴懲戒処分をするとの判断
 対象弁護士は、日弁連懲戒委員会に審査請求を行うことができます。
 懲戒請求者は、単位会がした処分が「不当に軽い」と考える場合には、異議申出を行うことができます。
⑵懲戒処分をしないとの判断
 懲戒請求者は、日弁連懲戒委員会に異議の申出を行うことができます。

3 日弁連綱紀委員会の判断

 単位会綱紀委員会が、事案を懲戒委員会に付さないとした判断に対し、懲戒請求者が異議の申出
を行った場合
⑴異議を棄却・却下する場合
 懲戒請求者は、日弁連綱紀審査会に綱紀審査の申出を行うことができます。
⑵異議に理由があると考える場合
 この場合、日弁連綱紀委員会は、自ら対象弁護士を処分することはせず、事案を単位会懲戒委員会に送る決定をします。この場合、単位会綱紀委員会の「事案を懲戒委員会に付さない」とした判断が取り消され、単位会懲戒委員会に事案が送られるということになりますので、この決定に対して対象弁護士が不服申し立てを行うことはできないと考えられます。

4 日弁連懲戒委員会の判断

⑴対象弁護士が、単位会懲戒委員会が行った懲戒処分に対して審査請求をした場合
ア 審査請求棄却・却下の場合
 この場合、対象弁護士は東京高等裁判所に対して処分の取消しを求める行政訴訟を提起することができます。
イ 審査請求に理由がある場合
 審査請求を認め、対象弁護士を懲戒しないとした判断に対しては、懲戒請求者は不服申立てできません。
 審査請求を認め、対象弁護士の処分を軽くする場合には、対象弁護士は処分されている状態なので、行政訴訟を提起できます。また、処分が軽くなったことに対しては、懲戒請求者は不服申し立てを吸うrことはできません。
⑵懲戒請求者が、単位会懲戒委員会が行った、懲戒処分をしないという決議に対して異議申出をした場合
ア 異議申出を棄却・却下する場合
 このとき、懲戒請求者に対して「綱紀審査」手続きは認められていません。
 また、懲戒請求者が訴訟提起をして処分を求めることも認められていません。
イ 異議に理由があると考える場合
 この場合、対象弁護士に対して何らかの処分を行うことになります。なお、弁護士法64条の5の規定により、日弁連懲戒委員会は、事案を単位会に差し戻すことはできません。
 日弁連懲戒委員会が行った懲戒処分に対しては、対象弁護士は行政訴訟を提起することができます。
⑶懲戒請求者が、単位会懲戒委員会が行った懲戒処分が不当に軽いという理由で異議申出をした場合
ア 異議申出を棄却・却下する場合
 この場合も、綱紀審査のような手続きはなく、行政訴訟もできません。
イ 異議申出に理由がある場合
 この場合、日弁連懲戒委員会は、処分を変更し、自ら重い処分を行うことになります。
 処分を重く変更された対象弁護士は、行政訴訟を提起することができます。

第2 日弁連による懲戒

1 日弁連綱紀委員会の判断

⑴事案を日弁連懲戒委員会に付するとの判断
 対象弁護士はこれに対して不服申し立てを行うことはできません。
⑵事案を日弁連懲戒委員会に付さないとの判断
 日弁連綱紀委員会が原審として調査を行うのは、「日弁連」が懲戒の事由があると判断した場合に限られます。
 一般の懲戒請求者が懲戒請求を行うことができるのは、弁護士又は弁護士法人の「所属弁護士会」に限られますので、
 一般の懲戒請求者が日弁連に懲戒請求を行うことはできません。
 そのため、事案を懲戒委員会に付さないとした判断に、日弁連自身が拘束されますので、不服申し立てをされることはありません。

2 日弁連懲戒委員会の判断

⑴懲戒処分をするの判断
 これに対しては、対象弁護士は行政訴訟を提起することができます。
⑵懲戒処分をしないとの判断
 1⑵と同じで、日弁連自身が拘束される以上、これに対して不服申し立てをされることはありません。

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