1 精神保健指定医について
精神保健指定医とは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律18条に定めがあるもので、指定されると措置入院を行うべきかどうかの判断などができることとなっています。
精神保健指定医になるためには、厚生労働大臣あてに申請を行って指定を受ける必要がありますが、①5年以上診断又は治療に従事した経験を有すること②3年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験を有すること③厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有すること④厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修の過程終了していることを満たしたうえで、指定医の職務を行うの必要な知識及び技能を有すると認められるものが大臣により指定されます。
2 精神保健指定医の取消し
反対に、同法律には精神保健医の指定が取り消される場合も定められています。
同法19条の2は
1 指定医がその医師免許を取り消され、又は期間を定めて医業の停止を命ぜられたときは、厚生労働 大臣は、その指定を取り消さなければならない。
2 指定医がこの法律若しくはこの法律に基づく命令に違反したとき又はその職務に関し著しく不当な行為を行つたときその他指定医として著しく不適当と認められるときは、厚生労働大臣は、その指定を取り消し、又は期間を定めてその職務の停止を命ずることができる。
としています。
1項は医師免許自体が取り消されたり医業停止を受けた場合ですが、この場合には当然医師としての業務を行うことができなくなりますので、精神保健指定も取り消されます。
2項は①精神保健及び精神傷害者福祉に関する法律か法律に基づく命令に違反したとき②職務に関し著しく不正な行為を行ったときというような指定医として著しく不適当と認められるときに指定が取り消されることがあるという規程です。1項と異なり、2項の「著しく不適当」な場合には指定が必ず取り消されるわけではありません。
ただ、「指定医として著しく不適当」というのは、基準としてあいまいであり、どのような場合に不適当とされるのかは必ずしも明確ではありません。ただ、新規申請については厚生労働省が資料を公表しています。この中で、ケースレポートについて不正があったケースについて大量取消しを行った旨が記載されています。申請の際の記載やケースレポートについて不実の記載をした場合などは、指定が取り消される(指定を受けられない)ことが予想されます。
反対に、指定医としての具体的な活動について、たとえば身体拘束時間が長すぎるとの理由で国家賠償請求を起こされ、それに敗訴したような場合まで「著しく不適当」となるかは明らかではありません。というのも、具体的な個々の医療行為の適否については、医師はその時点で明らかになっていることからしか判断できないのに対し、裁判は後からゆっくりとこれを判断しますから、仮に敗訴しても必ずしも医師の行為がすべて「著しく不適当」とまでは言えないものと思われます。