【弁護士が解説】控訴審を受任しない場合に依頼者にどこまで説明しなければならないか

【事例】

 X弁護士は、Aから貸金返還請求訴訟の被告側弁護の依頼を受け、これを受任しました。

 しかし、第一審の地方裁判所ではAは敗訴してしまい、仮執行宣言付きの判決が言い渡されてしまいました。

 これに対してAは納得せず、控訴を申し立てる意向を示しましたが、第一審で敗訴したのはXの弁護活動が原因であると考え、控訴審ではX以外の弁護士を選任すると述べていました。

 そこでXは、「第一審でやり取りした書類は判決文は、全てこのファイルに綴じられています。新しい弁護士さんのところにそれを持って相談に行ってください。」とだけ述べ、それ以上の説明をAに対して行わなかった。

 このXの行為は問題ないだろうか。

【解説】

 第一審で敗訴し、依頼者からクレームをつけられたような場合、弁護士としては苦しい立場に陥ります。また、依頼者が別の弁護士を選任するといったような場合には、なおのこと新しい弁護士に相談してほしいと思うものだと思われます。

 そこで、上記のXの様に、後のことは次の弁護士に聞いてください、という対応になりがちではあります。

 しかし、弁護士職務基本規程44条は「弁護士は、委任の終了に当たり、事件処理の状況又はその結果に関し、必要に応じ法的助言を付して、依頼者に説明しなければならない。」と定めています。単に事件処理の結果を報告するだけではなく、「必要に応じ法的助言を付して」説明しなければなりません。

 主文の勝訴・敗訴だけであれば比較的明白だと思われます。また、控訴の期限についても、直接法廷で判決文を聞いているような場合であれば裁判官が説明をしていますから分かりますが、そうではない場合には一般的には分からないものだと思われます。特に「仮執行宣言」が付されている場合、これがどのような効果を持つか、またこれを回避するためにはどのようにすればよいのかは、民事訴訟法の理解が無ければ困難です。

 そのため、Xとしては、控訴には期限があること、仮執行宣言が付されているので判決が確定しなくても執行されるおそれがあること等をAに対して説明しなければ、規程違反となる可能性があります。

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