【事例】
X弁護士は、自身の過去の依頼者から懲戒請求を出され、現在事件が綱紀委員会に係属しています。
綱紀委員会からX弁護士のところへ、資料の提出を求める手紙が届きました。
さて、この資料提出に応じなければならないのでしょうか。
【解説】
弁護士法70条の7は「綱紀委員会は、調査又は審査に関し必要があるときは、対象弁護士等、懲戒請求者、関係人及び官公署その他に対して陳述、説明又は資料の提出を求めることができる。」と定めており、綱紀委員会が資料要求をする根拠となっています。
それでは、これに回答義務があるのでしょうか。これについては法律では何の定めもありません。しかし、弁護士法が綱紀・懲戒委員会の議事などに細かい規定を置いていない関係で、各単位会には各委員会・手続きに関する規定が置かれているものと思われます。その中で、おそらく多くの単位会では「弁護士等については正当な理由ない限り、資料提出を求められたときには応じなければならない」とする規定が置かれているものと思われます。
守秘義務等の理由で応じられないのであれば正当な理由があると認められると思われますが、そのような理由がないのに資料要求を拒絶すると、会の規定に違反する可能性が高いと思われます。
そして、この違反があった場合、どのようになるかが問題です。
多くの議決書では、調査期日に出頭しないこと等が、処分を重くする不利な事情として記載されています。そのため、要求に理由なく応じないことは、処分を却って重くする可能性がある危険な行為です。また、会員には会則に従う義務が定められていますので、会則違反を構成し、新たな懲戒事由となる危険性があります。
そのため、委員会から求められた場合には、範囲はともかく、資料提示を行う必要性があります。