【事例】
X市の職員であるAさんは、ある日
①電車内で盗撮をし、逮捕されてしまいました。
②通勤途中に車で事故を起こし、被害者が亡くなってしまいました。
Aさんにはどのような処分がなされるのでしょうか。
【解説】
1 公務員の欠格事由
地方公務員であるAさんの身分関係については、地方公務員法が適用されることになります。また、自治体ごとに条例や基準がありますので、具体的な処分については自治体によって異なる形になるのですが、個々では法律の範囲内で解説をしたいと思います。
地方公務員法16条では、職員となることができない場合として「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」と定められています。「その執行を受けることがなくなるまで」というのは、いわゆる執行猶予中の期間を想定していただければよいと思います。そのため、仮に執行猶予付き判決であっても、公務員の場合には「職員となれない」=免職となってしまいます。
2 具体的な手続
①盗撮のケース
盗撮の場合、現行犯的な形であっても逮捕されることが多いと言えます。そして、逮捕されてしまうと、公務員の場合ほぼ確実に新聞等で報道されてしまいます。
刑事罰が出るよりも先に、報道等で問題となり、職場内での手続が開始されていきます。
とはいえ、公務員に対する処分は、行政手続の一種となりますので、法律上の規定にのっとって進められることになります。民間企業との異なり、どれほど悪質であってもいきなり免職になるというわけではないということです。
盗撮は、初犯であれば略式罰金となることが多いタイプの犯罪です。そのため、「禁錮以上」の刑ではないことから、刑事罰を理由に免職となることはありません。また、起訴と処分が同日であることも多い手続きですので、後から述べる起訴休職という必ずしもなるわけではありません。
多くの自治体を見ると、停職数か月となるケースが多いようです。
ところで、被害者の方と示談できた場合、刑事事件については不起訴処分(=罰を受けない)となることもあります。このとき、公務員としてはどのような処分になるのでしょうか。
既にみたように、報道等されることが多く、自治体の信用を失墜させていますから、仮に刑事罰が不起訴処分であっても、公務員としては何らかの処分(停職処分等)となる可能性は高いと思われます。ですので、刑事事件が解決したからといって、それで終わりというわけにはいきません。
②交通死亡事故のケース
死亡事故は、被害者が亡くなられているため大きな事件ではあるものの、故意に起こしているわけではない点で、①のケースよりも悪質性が低いとみられるかもしれません。
しかし、死亡事故の場合には、被害者に落ち度があるようなケースでもない限り、初犯であっても公判請求(正式な裁判。罰金より重い刑が求刑される)されることが高い事件です。公務員が起訴されると、地方公務員法28条2項2号により、休職となります(これを「起訴休職」と呼びます)。
そして、裁判を受けた結果、執行猶予付きの判決となってしまうと、これは「禁錮」刑となるため、欠格事由に該当し、免職となります。
このように、交通事故であっても、略式罰金を超える処分となってしまうと、失職することになります。
以上のように、公務員の身分は、刑事事件との関係で不安定な地位におかれてしまいます。何らかの事件を起こしてしまった場合には、職を守るためにもまずは弁護士にご相談ください。