紛議調停手続

1 紛議調停手続とは

 弁護士法第41条は、『弁護士会は、弁護士の職務又は弁護士法人の業務に関する紛議につき、弁護士、弁護士法人又は当事者その他関係人の請求により調停をすることができる』と定めています。
 また、弁護士職務基本規程第26条は『弁護士は、依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じないように努め、紛議が生じたときは、所属弁護士会の紛議調停で解決するよう努める』とされています。
 紛議調停手続とは、弁護士法第41条に定める調停手続きのことを指していますが、法・基本規程は具体的な手続きに関する規定を置いておらず、実際の手続きは各単位会の会則等で定められています。

2 紛議調停手続の請求者

 弁護士法第41条に記載の通り、紛議調停手続は「弁護士・弁護士法人・当事者・その他関係人」が請求できるとされています。
 懲戒請求が「何人」でも可能であることとは異なり、請求の主体が限定されています。
 また、職務基本規程第26条に記載の通り、弁護士と依頼者の間で紛議が生じたときは、弁護士はこの調停手続で解決するよう努めることが求められています。この規定の趣旨からすると、弁護士はいきなり依頼者に対して訴訟提起を行うのではなく、まずは調停によることを求められる(但し、訴訟提起をしたからといって訴訟が不適法になるものではない)ということになります。

3 紛議調停の対象

 どのような問題が紛議調停手続の対象となるかについては、弁護士法に規定があり、「弁護士の職務又は弁護士法人の業務に関する」ものが対象とされています。
 弁護士費用等の金銭に関する問題だけでなく、預かった書類の帰属や、事務処理についての責任など、広く弁護士の職務等に含まれるものが対象と考えられますが、弁護士の私的な問題(たとえば、弁護士が不倫関係にあった場合に、その不倫相手からの請求等)は対象にならないと考えられます。

4 手続

 手続としては、調停の手続きとなるため、当事者に強制力等はなく、最終的に合意ができなければ調停不成立となります。
 しかし、職務基本規程第26条がある関係で、調停を申し立てられた弁護士が調停に出頭しないことを繰り返すような場合には、それ自体懲戒事由となる可能性があります。
 また、紛議調停手続は、いわば懲戒請求の前段階(法律・規則上調停を先行させなければいけない決まりはありませんが、調停不成立の場合懲戒請求をされるおそれは上がると思われます)とも言えますから、この手続きの中で和解を成立させることには大きな意味があると言えます。

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