税理士の懲戒処分について

🔷 懲戒処分の根拠

税理士の懲戒処分は、税理士法(昭和26年法律第237号)に基づいて行われます。具体的には、以下の条文が関係します:

  • 税理士法第44条:懲戒処分の種類
  • 税理士法第47条:懲戒処分の手続き・公表 など

🔷 懲戒処分の種類(税理士法第44条)

懲戒処分には、以下の3つの種類があります:

  1. 戒告
    • 最も軽い処分。
  2. 業務停止
    • 一定期間(最長2年)、税理士業務を行うことを禁止される。
  3. 税理士業務の禁止
    • 最も重い処分。税理士としての資格を失う。

🔷 懲戒処分の対象となる行為(例)

懲戒処分は、税理士が以下のような不正や非行を行った場合に科されます。

【1】法令違反・重大な職務上の義務違反

  • 虚偽の申告書作成・提出
  • 脱税の幇助(ほうじょ)
  • 無資格者に税理士業務を行わせる(名義貸し)
  • 職業上の秘密漏洩

【2】品位を害する行為

  • 詐欺や横領などの刑事事件での有罪判決
  • 顧客とのトラブル(報酬の不当請求、財産の着服など)

【3】登録事項に虚偽があった場合

  • 登録申請時に虚偽の書類を提出していたことが判明した場合

🔷 懲戒処分の手続き

  1. 事実の調査
    • 国税局や税務署などが調査を行う
  2. 弁明の機会の付与
    • 税理士本人に対して釈明の機会が与えられる(意見陳述・聴聞)
  3. 処分決定
    • 財務大臣が最終的に処分を決定
  4. 処分の公表
    • 処分の内容は官報などで公表される(税理士法第47条の4)

🔷 懲戒処分を受けた税理士のその後

処分の重さによって影響は異なりますが、例えば:

  • 戒告や短期間の業務停止 → 業務復帰は可能。ただし信用回復には時間がかかる。
  • 税理士業務の禁止→少なくとも3年は業務ができないほか、再登録の際も厳しい審査を受ける。

✅ 処分件数・傾向

  • 国税庁が公表している資料によると、令和6年度(※令和6年4月1日以降)における税理士・税理士法人に対する懲戒処分等は 64件 に達し、過去最多を更新しています。
  • 年度別に見ると、令和2年度22件、令和3年度21件、令和4年度13件、令和5年度38件、令和6年度64件と増加傾向にあります。
  • 処分の種類としては、「業務停止」「業務禁止」の割合が目立っており、戒告(最も軽い処分)は少数です。
  • 違反行為として多いのは、
    • 故意による「不真正税務書類の作成」
    • 「信用失墜行為」(自己脱税、多額の申告漏れ、名義貸し等)
    • 「帳簿作成義務違反」「使用人監督義務違反」なども見られます。

📋 具体的な事例

いくつか典型的な事例を挙げます。

事例A:故意による不真正税務書類の作成

  • ある税理士が、関与先法人の申告にあたって、未完成工事支出金として計上すべきでないものを、黒字化した翌期に取り崩す形で計上するなど、「真正の事実に反する」申告書を故意に作成したというもの
  • 上記のようなケースでは、「6か月以上2年以内の税理士業務停止又は業務禁止」が処分される典型例となっています。

事例B:多額かつ反職業倫理的な自己申告漏れ/信用失墜行為

  • 税理士自身の申告義務に違反し、多額の申告漏れがあったり、職業倫理に著しく反する行為があったというもの。
  • また、名義貸し(税理士でない者に自分の名義を使わせる)等も信用失墜行為として問題とされており、業務禁止処分まで発展している例があります。

事例C:税理士法人への処分

  • 税理士法人が、社員税理士の業務監督体制・内部管理体制を整備せず、「運営が著しく不当」と認められたため処分を受けた例があります。

🔍 注意すべきポイント

  • 処分を受けるか否か・処分の重さを決める際には、「行為の性質・態様・効果」「処分を受ける者の前後の態度」「同種行為の処分歴」「社会に与える影響」などが総合的に判断されます。
  • 最近の改正(令和5年4月以降適用)では、元税理士であっても「懲戒処分を受けるべきであったことについての決定」ができるようになるなど、懲戒逃れ防止の仕組みが強化されています。

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