このサイトでは様々な「懲戒」を扱っていますが、その意味合いは文脈によって様々です。
そこで、ここでは「懲戒」という言葉について分類しておこうと思います。
①民間企業における「懲戒」
民間企業で仕事をしているうえで、「懲戒処分」と受けることがあります。
これは企業の労働者への監督権の一環として、懲戒権として認められているものになります。
停職、減給などの様々な処分がありますが、これは労働問題の一環としてなされるものであり、争う場合には労働審判、民事訴訟などで争うことになります。
②公務員の懲戒
公務員も労働者ですが、「懲戒処分」を受けることがあります。
これは地方公務員法、国家公務員法といった公務員に関係する法律により定められているものであり、行政処分の一環として行われるものです。これを争う場合には、人事院、公平委員会等の行政機関に不服申し立てを行った後、行政訴訟を提起することになります。
③医師・看護師の懲戒
医師や看護師に対しても懲戒処分がなされることがあります。
その前に、医師や看護師でも、民間病院や公立病院に勤務している場合があります。この場合、医師や看護師も労働者ですから、①②で見たいような懲戒処分が別途発生する可能性があります。
ここで問題にする医師や看護師に対する「懲戒」は、それらの資格に対する処分です。
罰金以上の刑を受けた場合などには、医師や看護師は何らかの懲戒処分を受けることがあります。これは、厚生労働大臣が個人に対して科すものであり、業務停止などの処分を行うことになっています。
これらの処分は、厚生労働省の医道審議会で検討されるのですが、一時的には都道府県の担当部局が聴き取り等を行います。そのため、都道府県⇒医道審議会と上がって、最終的に厚生労働大臣による処分が行われることになります。
そのため、これらの処分を争う場合にも行政訴訟を提起することになります。
④弁護士に対する懲戒
弁護士に対する懲戒処分は、これらの懲戒処分とは異なります。
まず、申立が認められています。何人でも弁護士に対して懲戒をするよう申し出ることができます。医師に対する懲戒をするように厚生労働大臣に申立てることはできませんので、これは大きな違いです。
次に、処分の第一次的な判断は各弁護士会及び日本弁護士連合会によってなされるというところにあります。たとえば、医師による処分は厚生労働大臣によってなされますが、これに対して不服の訴えを提起する場合には、地方裁判所に訴訟提起することになりますしかし、弁護士会の処分に不服がある場合には日本弁護士連合会に不服申立てをし、その処分にも不服がある場合には東京高等裁判所に訴えを提起することになっています。日弁連が第一審的な役割を果たすことになっています。
弁護士に対する懲戒処分は、いずれにしても資格に対するものになっています。また、官報に公告されることになっているので、必ず氏名などが公になります。公務員に対する処分も公表されていますが、氏名などまで公表されている例は多くなく、この点でも異なります。