弁護士が交通事故を起こした場合、その事故の内容や責任の程度によっては、弁護士資格に影響を及ぼす可能性があります。ただし、「交通事故を起こした」という事実だけで直ちに弁護士資格を失うわけではありません。以下に、具体的なポイントを解説します。
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1. 弁護士資格への直接的な影響
弁護士資格の停止や剥奪は、主に「品位を失う行為」があった場合に問題となります(弁護士法第56条、同法第65条など)。したがって、交通事故においても以下のような事情がある場合は懲戒処分の対象となる可能性があります。
▼ 懲戒処分の対象となり得るケース:
ケース | 資格への影響 |
---|---|
飲酒運転・無免許運転・ひき逃げ等 | 高い確率で懲戒処分(戒告、業務停止、除名など)となる可能性あります。刑事罰も予想されるので、そちらにより資格を喪失する可能性もあります。 |
人身事故(重過失あり) | 過失の程度やその後の対応によっては処分対象になり得えますが、過失犯自体ではそれほど処分の可能性が高いとまで言えません。しかし、刑事罰の内容により資格を喪失する可能性があります。 |
軽微な物損事故(過失小) | 原則として弁護士資格に影響が出たり、何らかの処分を受ける可能性は低いと思われます。 |
2. 懲戒処分の種類
懲戒処分は、弁護士会によって行われるもので、以下のような種類があります(弁護士法第56条)。
処分の種類 | 内容 |
---|---|
戒告 | 厳重注意に相当。公告はされるが、業務停止にはならない。 |
業務停止 | 一定期間、弁護士業務の遂行が禁止される。 |
退会命令 | 当該弁護士会からの強制退会。 |
除名 | 弁護士としての資格そのものを剥奪。 |
3. 刑事処分と弁護士資格の関係
交通事故が刑事事件となった場合(例:過失運転致死傷、危険運転致死傷など)、刑事罰の内容も重要です。
- 拘禁刑以上の刑(執行猶予含む)を受けた場合:
- 弁護士法第7条により、欠格事由に該当し、弁護士資格を喪失します。
- 執行猶予期間が満了すれば、再度登録の申請は可能。
4. 事故後の対応がカギとなることも
弁護士としての社会的信用や倫理性が問われるため、以下のような対応は資格への影響を左右する可能性があります。
- 被害者への誠意ある謝罪と補償
- 事故の事実を隠蔽しない
- 適切な報告を行う(弁護士会などに必要があれば)
まとめ
交通事故の内容 | 弁護士資格への影響 |
---|---|
軽微な物損事故 | 原則として影響なし |
人身事故(過失あり) | 過失の程度と対応によっては処分対象に |
飲酒運転・ひき逃げ | 高確率で懲戒処分、場合によっては資格喪失も |
拘禁刑以上の刑 | 欠格事由に該当し、資格喪失 |