双方代理をすることは許されるか

🔹架空の事例:不動産売買トラブル

登場人物:

  • 売主Aさん:築30年の中古住宅を売りたい
  • 買主Bさん:その家を購入したい
  • 弁護士X先生:法律事務所に勤める弁護士

📌事例の経緯:

AさんとBさんは、不動産業者を通じて知り合い、売買価格3,000万円で合意しました。契約書を作成するにあたり、両者は共通の知人である弁護士Xに相談します。

X先生は、「中立な立場で契約書を作成する」と提案し、AさんとBさんの双方から正式に依頼を受けて、契約書を作成しました。

ところが、契約締結後にトラブルが発生します。


⚠️トラブル発生:

買主Bさんが入居後、建物に重大な雨漏りの欠陥があることが判明。Bさんは「契約時に説明がなかった。売主Aは瑕疵担保責任(契約不適合責任)を負うべきだ」として損害賠償を請求したいと言います。

一方、Aさんは「そんな話は知らなかったし、契約書にも『現状有姿で引き渡す』と書いてあるから責任はない」と主張。

両者はそれぞれ弁護士Xに相談しますが……

【解説】

 双方の代理となることは、民法でも無権代理行為となるようになっています。ただ、民法108条1項では「本人があらかじめ許諾した行為」については双方代理も可としています。

 しかし、これは弁護士倫理上問題ないのでしょうか。

 弁護士法25条は「弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(中略)」

と定めています。

 第1号は、正に双方代理となるような場面を規定しています。しかし、25条但書で、1号は除外されていません。つまり、1号のような場面では、仮に相手方が同意をしていたとしても、弁護士法上は受任できないということになります。

 弁護士法25条違反の私法行為の効力については別論、弁護士として架空の事例のような場面で受任をすることは、たとえ双方の同意があったとしても認められません。

 双方代理に例外があることは民法上学習しますので、ついつい受任できるかのような気持ちになりますが、実際には認められませんから、注意が必要です。

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