【弁護士が解説】弁護士のマスコミ対応

1 はじめに

 よく、報道などで刑事事件の弁護人がマスコミの取材に応じている光景を目にします。

 しかし、あのような取材対応に問題は生じないのでしょうか。

2 守秘義務

 弁護士法23条により、弁護士は「職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う」とされています。これと同じ内容の規定が弁護士職務基本規程23条にも定められています。

 接見室で依頼者(被疑者、被告人)と話した内容は、当然守秘義務の範囲に含まれることとなります。そのため、仮にマスコミ対応を行うとすれば、依頼者とよく相談し、話す内容を決めたうえでなければ、守秘義務違反の問題が生じる可能性があります。

 ところで、この守秘義務の範囲は「依頼者」に限られるのかも問題となります。被疑者・被告人の家族のプライバシーが関係する(たとえば家庭環境など)ことがありうるだけではなく、事件の性質によっては被害者のプライバシーにも影響が出る可能性があります。

 この守秘義務の範囲については争いがあるものの、弁護士法23条では「依頼者」と限定しているものではないので、第三者の秘密も保護の対象であるとの見解が有力です。そのため、事案の内容を話すこと自体も問題となり得る可能性があることに注意が必要です。

3 真実義務

 弁護人がマスコミに伝えた内容は、テレビや新聞で報道される可能性が高いと言えます。仮にそこで弁護士が事実と異なる発言を行ったり、共犯者との口裏合わせになりかねないような発言をした場合には、別途真実義務の問題が生じる可能性があります。

 たとえば、弁護士が後に裁判員を誘導する目的で、本来被告人が話していない内容を話したり、事実と異なることを発言したような場合には、真実義務違反となる可能性があります。

 また、未発見の共犯者がいる場合に、その共犯者の罪証隠滅を手助けするような場合も問題です。真実義務違反だけであれば懲戒の問題で留まりますが、場合によっては犯人隠避に該当する危険性もあります。

 

4 最後に

 弁護士として、マスコミから対応を求められることは少なくありません。

 まず第一には依頼者本人の意向を確認することが必要ですが、それ以外にも注意すべき点が存在します。弁護士としてマスコミ対応を求められた際には、他の弁護士に相談するなどして慎重に検討する必要があります。

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