【弁護士が解説】弁護士自身の犯罪はどのような影響を及ぼすか

【事例】

 X弁護士は、ある日の会食で飲酒をし、その後帰宅する際に自家用車を運転して帰宅してしまいました。

 途中、ハンドル操作を誤ったX弁護士は、前方に停車中の車両に衝突してしまい、運転者に全治1週間のけがを負わせてしまいました。

 すぐに警察を呼んだのですが、アルコールの匂いがするということで呼気検査が行われ、基準値を上回る数値が計測されたことから、酒気帯び運転の罪で逮捕されることとなりました。

 弁護士が酒気帯び運転で逮捕されたということで、このニュースはX弁護士が所属するA県で大きく報道され、A弁護士会の会長が謝罪する事態となりました。

 このとき、X弁護士にはどのような処分が科されるのでしょうか。

【解説】

 今回のX弁護士の行為は、道路交通法違反(酒気帯び運転)、過失運転致傷罪に該当することになります。もちろん、飲酒の程度や直前の運転行為などから危険運転致傷となる可能性も否定できませんが、今回はひとまず道路交通法違反、過失運転致傷罪ということで検討を進めます。

 弁護士の資格と刑事罰に関しては、明確なものとして弁護士法7条1号があります。同号は

第七条 次に掲げる者は、第四条、第五条及び前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有しない。

 禁錮以上の刑に処せられた者

と定めており、禁錮以上の刑に処せられた者については弁護士となる資格を有しないこととなっています。この条文では、刑の執行の猶予の有無などは問われていません。そのため、仮に執行猶予付きの判決であったとしても、判決確定と同時に弁護士となる資格を喪失することとなります。

 たとえ怪我の程度が軽かったとしても、酒気帯びの上での交通事故であれば公判請求の可能性もありますから、弁護士となる資格を喪失する可能性があります。

 そこで、何とか交通事故の被害者の方とは示談交渉を行い、宥恕を得られたとします。そうすると、過失運転致傷については不起訴となる可能性が出てきます。

 ただ、それでも道路交通法違反については何らかの処罰がなされる可能性が高いと言えます。

 酒気帯び運転の初犯の場合には、多くの場合には罰金刑となります。そして、罰金刑自体は、「禁錮以上の刑」ではありませんので、明示的な資格喪失要件ではありません。

 しかし、法を守るべき弁護士が法を犯したということ自体が品位を失う非行であると考えられているため、懲戒処分の対象となります。

 昨今飲酒運転の撲滅が叫ばれ、公務員であれば一発で懲戒免職となる時代です。そのため、弁護士に対しても厳しい目が向けられていますから、戒告などではなく、業務停止1~3か月程度(事情により期間は前後します)となる可能性が高いと言えます。

 飲酒運転で事故を起こしてしまった場合、まずは被害者の方との示談交渉を成立させなければ、弁護士資格自体を喪失してしまいます。ですので、これが最も大切な活動です。

 次に、道路交通法違反での処罰をできる限り回避するような弁護活動が必要なところですが、どうしても避けられない場合には、できる限り弁護士会への処分が軽くなるよう、被害者の方からの嘆願書を提出したり、再犯防止のための取り組みを書証化するなどできる限りのことをする必要があります。

 このような事態になってしまった場合には、自分で対処しようとするのではなく、専門の弁護士に依頼する方が事態に対する冷静かつ客観的な評価が可能であると思います。このような事態になってしまった場合には、あいち刑事事件総合法律事務所へご連絡下さい。専門の弁護士が相談の対応をさせていただきます。

 

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