【弁護士が解説】会費の滞納により懲戒処分となるのはなぜか

このページの目次

【事例】

 A弁護士は、B県弁護士会に所属している弁護士です。
 B県でも、弁護士数がかなり増えてきたことから、A弁護士の売上自体は年々減少していました。
 弁護士である以上、毎月の会費の支払いが必要となってきます。
 しかし、A弁護士はなかなかその費用が捻出できず、支払が滞りがちになっています。

【解説】

 弁護士会は強制加入団体となっています。
 法律上の制度でいえば、「弁護士となるには、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿に登録されなければならない。」(弁護士法8条)とされていますので、弁護士は全員日弁連に備えている名簿に登録されていることになります。
 ただ、直接日弁連に登録を求めることはできず、「弁護士となるには、入会しようとする弁護士会を経て、日本弁護士連合会に登録の請求をしなければならない。」(弁護士法9条)となっており、必ずいずれかの弁護士会を経由して日弁連に登録の請求をする必要があります。
 そのため、全ての弁護士は①どこかの単位会に入会し②日弁連の名簿に登録される必要があります。
 この結果というわけではないですが、弁護士会の「会費」と呼ばれるものには、日弁連等の会費と単位会の会費の2種類があることになります。
 この会費支払いの根拠となっているものですが、日弁連については「日本弁護士連合会会則」第95条で「弁護士である会員は、本会の会費として月額一万二百円を、所属弁護士会を経て、本会に納めなければならない。」とされており、会則上会費の支払いが義務となっています。また日弁連ではこのほかに特別会費(会則95条の3)についての規定があり、こちらも支払いが義務となっています。
 これに対し、単位会の会費については、各単位会の会則により支払いが義務付けられているところです。

 弁護士には、「所属弁護士会及び日本弁護士連合会の会則を守らなければならない」(弁護士法22条)という義務があります。会則により会費の支払いが義務付けられている以上、会費を支払わないという行為は会則違反行為となります。
 そのため、弁護士法56条の懲戒事由としての「会則違反」に該当し、何からの懲戒を受けるということになってしまいます。

ただ、会費の滞納をしたからと言ってすぐに懲戒処分を受けるわけではありません。日弁連の会則上は6か月以上の会費の滞納があった場合に懲戒することができると定めています(会則97条)。
実際に懲戒事例として公告されているようなものは、それなりの期間の滞納があったり、未納が繰り返されている事案の他、手続の最中に会費を支払わなかった例が目立ちます。
 そのため、会費滞納の事案におけるもっとも最良の行為は、速やかに未納分の会費を支払うということになります。
 それでも金銭的にどうしても会費が支払えない等という場合には、やむを得ず処分を受けるということになります。
 処分の内容は滞納している金額(月数)によるところですが、何回も未納で処分を受けていたり、未納金が大きくなるような場合には、退会命令の処分となってしまいます。
 弁護士として活動を継続するためには速やかに納付することが必要です。

【最後に】

 弁護士が懲戒請求を受けた場合、弁護士は代理人ではなく紛争の当事者となります。代理人として紛争にあたるのはいつもどおり出来たとしても、当事者として紛争にあたる場合には思った通りの活動が出来ないということはあり得ます。代理人を入れることで、事実をしっかりと整理し、懲戒処分の回避や軽減につながる可能性が上がります。
 加えて、勤務弁護士について懲戒請求を受けた場合に、実際に懲戒処分がなされれば事務所全体の評判に関わる可能性があります。当該勤務弁護士について解雇・業務委託契約解除をしたとしても悪影響が払拭できない可能性もあります。
 勤務弁護士が懲戒請求を受けている場合も含めて、懲戒請求手続について詳しく、懲戒請求に対する弁護活動経験が豊富な弁護士への相談を検討している先生方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお問い合わせください。

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー 秘密厳守の無料相談